PFASのやっかいなところは、目には見えないほどの小さな物質であり、においや味を感知することができない点です。水に溶けるため様々なところへ移動ができ、かつ分解しにくいため地下水や水道水へ流れ込んだ場合は、最終的に私たちの体に侵入することもあります。また、私たちの体はたくさんの水を含んでいるのでPFASも体内を移動できるのです。今これは大きな問題となっています。

2020年に設定された日本の水質のPFAS暫定目標値は、当時の科学的知見に基づき、50ng(ナノグラム)/ℓとなりました。学校プール(25m×12m×深さ1m)に耳かき1杯ほどの量にあたります。これは、この濃度の水を体重50kgの人が水を一生涯にわたって毎日2ℓ飲用したとしても健康への悪影響はないと考えられる、という指針です。この暫定目標値は知見が深まることで変更される可能性があります。
50ng/ℓを基準にした場合、2020年には目標値を超える事業者がありましたが、2024年にはゼロになっています(全事業者が調査に参加しているわけではないのでそこは注意ポイントです)。しかし、基準値の50%(25ng/ℓ)超、25%(5ng/ℓ)超についての分布にすると2020年でも全国で300を超える事業所から確認されています。想像以上に拡散していたPFASへの危機感から、国はこれまでの「目標数値への努力義務」だったものを「水質基準(検査3か月に1回、基準超えていれば改善の義務)」へ引き上げを行う予定です。

そもそも国内のPFAS問題の発端は、2016年に沖縄の基地近くの河川の水質検査でPFAS値が高濃度だったことがきっかけです。そのほかにも、空港やいくつかの工場などで基準値を超えるPFASが検出されました。PFASは雨などに流され拡散し広範囲に影響が及ぶため、たとえ遠い距離での検出であっても、水環境中を巡り巡った結果、みなさんが摂取してしまう可能性はゼロではありません。これがPFASを完全に無くすことが難しい理由でもあります。気になる方は、この機会にぜひ一度、自宅まわりの水環境を調べてみられてはいかがでしょうか。